ピスコラはかどらないのでイシキトナメ進めます。
前回までの結果
今回のカードはイロモノ対決。
「もし失敗したら地球滅びる」VS「とにかく華麗に!!」
7. 「もし失敗したら地球滅びる」
ストーリー
21XX年。
世界各地でルービックキューブの大会が行われていた平和な時代も今は昔。世界の情勢は、当時の人間にはおよそ想像もできないほどの変化を遂げていた。
科学技術と環境破壊のバランスを保つことに誰もが躍起になっていた時代は既に終わった。それは、当時のアメリカ大統領であったバラク・オバマが、プレッツェルにつまずいて転び、アゴを骨折して退任を余儀なくされた後を継いで大統領に就任したハンバーガー・エコ太郎が、「我がアメリカとアメリカ国民は今後一切環境のことを気にしない」と高らかに宣言したのがきっかけだった。以降アメリカは恐るべき経済的な急成長を遂げ、一方で森や山は誰も寄り付かない死の土地となった。
アメリカに追随する国は多かった。中国を筆頭に、EU各国、ケニア、東ティモール、アゼルバイジャン、果てはモルディブまでが、もう環境を(゚ε゚)キニシナイ!!――と宣言した(そのせいでモルディブは海の底に沈むことになったが)。国連はバラバラとなり、レジスタンス化した数多の自然保護団体が、それぞれの国で政府を転覆させようとしたため、多くの国が厳しい内戦状態となった。
さて、そんな中、我が国日本は、長引くデフレの渦に巻き込まれてそのまま島ごと沈没してしまうという離れ業をやってのけた。デフレの渦の発生源であった首都東京がぐるぐる回りながら真っ先に海に沈没したため、東京頼みの地方都市は何をどうしたらいいか全くわからなくなってしまった。結局その後、日本は大した対策を打ち出すこともできず、レコード盤のようにぐるぐる回りながら日本海と太平洋の間に吸い込まれていった(北方四島や竹島、尖閣諸島も吸い込まれたので、結果的にそれらの島々は日本のものだったのだろう。沈んでしまった今ではそのことにあまり意味は無いが)。とんでもなく信じがたい大珍事であったため、経済だ、エコだと内戦に忙しい世界中の人々も、口を大きく開けたまま何も言うことができなかった。
そんな情けない世界に嫌気が差したチベットのとある高僧が、ヒマラヤの石ころを適当に組み合わせて、世界を元に戻すための道具を作り出した。この道具は一見単なる57mm四方のサイズの立方体ではあるが、実は全体がさらに細かい27個の立方体に均等に分かれており、それぞれの列を縦横無尽に回転させることができた。立方体の各面にはそれぞれ違った色が塗られていた。青色は空を、緑色は自然を、黄色は大地を、赤色は動物を、白色は精神を、オレンジ色はみかんをそれぞれ象徴していた。その小さな立方体は世界と連動していたのである。各面を回転させることで色を混ぜ、世界をさらなる混沌に導くこともできたが、逆に各面を一色ずつに完成させることで、整然たる世界を取り戻すこともできるのであった。
「デフレの渦に巻き込まれて沈没した日本」からヒントを得て作り上げられたこの道具は「叡智」と名付けられた。「叡智」の完成はまさに奇跡であったが、実際のところそれは地球の助けを呼ぶ声がもたらした奇跡でもあった。
しかし、「叡智」の各面の色をそろえることは恐ろしく難しかった。「叡智」を作り上げた高僧ですら諦めざるを得なかったのだから相当である。何しろ、適当なサイズに作ったはいいものの、各面の色の組み合わせを計算してみると、何と4,325京2,003兆2,744億8,985万6,000通りもあるのだ。こんなことなら「みかん」を表すオレンジ色なんか省けば良かった、と高僧は嘆いたがもう遅かった(それに正五面体はこの世には存在しないのである)。彼は「叡智」をチベットの山奥深くに封印し、そのまま下山した後、この世のありとあらゆるみかんの木を枯らすことを目的としたアメリカの新興企業に就職し、そこそこ出世した。
このままでは地球は破滅に向かう一方である。それを止める唯一の手立てはチベットの山奥に封印された色がバラバラのままの「叡智」を完成させること。
君にはその仕事をお願いしたいと思う。
……皆さん、ちゃんと飛ばしましたよね?(
さて、ソルブですが、正直どうなるか全く読めません。
僕ヘタレですから逆に遅くなりそうな気さえします。
これはよくある自分ルールを使った課題パターンですよね。「これがうまくできたら彼女も俺のことが好き」「これ失敗したら俺は一生何やっても駄目」と勝手に自分でルールを作って自分の気持ちを高めるやつです(テニプリの葵剣太郎がやってましたね、そーいえば)。
ルールの作り方が巧妙でないと効き目が無いような気がします。「自分と関係のあるルール・ないルール」「それらしい因果関係のあるルール・ないルール」「ポジティブなルール・ネガティブなルール」などいろいろとルールの作り方が考えられます。今回の「地球滅びる」なんかは自分と関係ないですし、それらしい因果関係もないし、思いっきりネガティブなルールなので、あまり効果はないかもしれません。
とはいえ予想はあくまで予想。それでは実際にやってみましょう。
出だし。
14.24, 11.31, 12.33, 20.98+, 13.87, 14.61, 12.56, 17.73, 17.35, 13.33
な、何だ?! けっこう良いぞ。
ただ、あんまり俺地球のこと心配してないな。
プラ2とかやっちゃってるけど、地球が破滅する気配全然ないからかな。
気持ちが乗ってこなさすぎるが、それでもちゃんと地球を救うということをイメージしてから揃える。
結果。
14.24, 11.31, 12.33, 20.98+, 13.87, 14.61, 12.56, 17.73, 17.35, 13.33, 13.93, 11.29, 17.65, 13.43, 15.56, 14.59, 15.43, 14.52, 16.46, 13.12, 14.22, 16.88, 15.06, 14.48, 12.94, 13.32, 11.49, 17.92, 13.42, 15.75, 12.02, 17.03, 13.07, 16.19, 20.04+, 15.56, 16.61, 17.58, 14.90, 12.44, 12.70, 12.90, 15.80+, 15.53, 15.49, 18.89, 17.48, 13.45, 12.45, 13.74
single: 11.29 / avg5: 13.23 / avg12: 14.12 / avg50: 14.76
ふつう。ていうかほとんど「地球滅びる」の効果は無かった気がする。だって地球滅びないし。つまり単に調子がふつうだったということ。
これはともすると、勝っちゃうぞ。
ていうか、「とにかく先読み」が「地球滅びる」に1秒近く負けてるのが悲しい。
これは単に、また久々にキューブ回すようになってきたから、ちょっとずつ調子を取り戻してきているだけかな?
さて、次の課題はちょっと難しい。
5. 「とにかく華麗に!!」
華麗にそろえるというのは、具体的にどういうことか自分でもよくわかりません。ただ、速い人のソルブはみんな華麗に見えますよね。
一応ちょっとくらいは考えておくと、引っかからないソルブは華麗。
それと、独特のリズム感のあるソルブも華麗。たとえば、ゆっくりに見えるけど全然止まらないで速いタイムを出す、とか。逆に、パートごとに全速でそろえるけどパート間の急停止で先を読んでいるソルブ、とか(nakaji氏が世界チャンプになる前は前者のソルブが理想とされていたけど、なった後に彼の影響で後者が流行ったんですよね、確か)。
あとは指使いがかっこいいソルブも華麗。
Rouxはそういう意味でふつうにそろえていても華麗なんだけど。
ごちゃごちゃ考えていても仕方がないので、実際に揃えながら華麗さを模索してみよう。
そんなこんなで暗雲立ち込める出だし。
14.82, 15.29, 15.86, 15.91, 20.08, 17.46, 15.25, 15.55, 17.36, 21.04
意外と意識を持ってくるのは簡単でした。
しかし、自分の考えている「華麗さ」がどうも見当違いな華麗さのような気がしてならない。
「華麗に」回そうとすると、なぜか以下の症状が出る。
・まずタイマーストップの時のスペースキー押下がなぜか「ッターーーン!」になる。
・ミスっても全然意に介さない。最後まで同じペースで回そうとする。無理に急ごうとしない。
・インスペクションの時に無駄な動きをしてしまう。
・「見たか、この華麗なるソルブ……!!」とか言いたくなる(タイム15秒台)。
厨二か。
早々にこれは勝てない、と思う。
でも楽しいっちゃ楽しい。
育ってないShuangRenじゃなければもっと良かったかもしれない。
結果。
14.82, 15.29, 15.86, 15.91, 20.08, 17.46, 15.25, 15.55, 17.36, 21.04, 18.42, 15.58, 16.54, 15.57, 17.27, 15.05, 20.35, 13.16, 15.14, 17.06, 19.02, 19.19, 14.98, 15.22, 16.49, 16.78+, 16.25, 15.06, 15.55, 16.45, 16.69, 13.29, 13.57, 22.33, 15.31, 14.33, 13.51, 17.94, 17.46, 18.34, 15.92+, 13.22, 13.78, 15.13, DNF(16.66), 19.12, 15.91, 12.89, 20.13, 11.73
single: 11.73 / avg5: 14.40 / avg12: 15.35 / avg50: 16.30
圧倒的大敗でした。
オススメはしません。
華麗にそろえることを意識するというよりも、速くそろえることで結果的に華麗になる、という考え方のほうが華麗さに関しては近道のようです。
「地球滅びる」勝ち上がっちゃったよ……
次回はファーストラウンド最後の戦いです。
お楽しみに。
――
これが、「叡智」か。
真介は、目の前にある僅か57mm四方の、しかしこの大いなる地球と連動しているという伝説の道具に手を伸ばした。
アメリカにホームステイ中に沈没した自分の故郷。自分の唯一の特技。巻き込まれたいくつもの戦争。捕虜として過ごした日々。みかんを異常に憎む謎のアジア人。世界を救う唯一の手段。チベットへの過酷な旅。仲間の死――信じようもないたくさんの出来事が積み重なった上に、今の真介がいた。
「どう見てもルービックキューブだ」
隊長の意見は最もだった。見た目も、手触りも、重さも、全てルービックキューブそのものだった。とてもヒマラヤの石ころを使って作られたとは思えない。特に、2013年ごろに発売されたver2.0とそっくりだ。
真介は「叡智」を手に取ると、何の躊躇もなく力を入れて中心が赤色の面を回した。
赤色と黄色のエッジキューブが動き、黄色のセンターキューブとくっついた。
「お、おい! 何やってんだ」
隊長は慌てて時計を見た。「叡智」は、完成させるまでの時間が問題だった。初手を動かしてから時間が経ちすぎると、世界はあっという間に混沌の世界へと落ち込んでしまうと、あのみかん嫌いのアジア人が言っていた。耐えられてせいぜい5~6秒といったところである。
何の策もなく迂闊に初手を打つことは、地球の破滅とイコールである。ここまでの過酷な旅もあっという間に水の泡だ。隊長としては、少なくとも三日三晩は「叡智」とにらみ合いながら、策を練るつもりだったのである。しかし、真介には全く別の考えがあった。
「これは「叡智」なんかじゃない。ルービックキューブだ」
真介は手を止めることなく言った。
「僕は勉強ができない。運動もできない。学校ではいじめられた。誰と会っても、何をしていても劣等感を感じた。でも、これだけは別だ」
真介が一度手を動かすだけで、「叡智」の面は三つも四つもいっぺんに動いた。
「これだけが僕のとりえだった。毎日何時間でも没頭できた。もしこれに、全世界の命運がかかっているんだとしても、これなら絶対に間違えない」
「叡智」は様々に色を変えていった。隊長は様々に色の変わる「叡智」から、視線を逸らすことができなかった。
「気負いでも、自信でも、何でもない。ただ単に、これを間違いなくそろえられるということ」
視線を外さずに見ていたはずが、いつの間にか色の塊がたくさんできていることに隊長は驚いた。まだ数秒しか経っていない。あっという間に、いや、あっという間もなく、地球が元通りになっていく。
「それは僕にとって、本当に、ごくありふれた、当然のことなんだ」
「叡智」が、完成した。
何秒だ?――隊長はハッとして時計を見た。秒針はわずかに3秒しか進んでいなかった。
「3秒?! 嘘だろ……お前、あんなに喋ってたじゃないか」
「不思議だろ。でも、これが僕なんだ」
チベットの山々や、青い空には、見た目には何の変化もなかった。しかし、隊長には「これで地球が救われた」という確信があった。
「白の面が最後にそろったな」
隊長が確認できたのはそれだけだった。
「白色は、あのアジア人によれば、人間の精神の象徴だ。俺は、その白色がそろった瞬間に間違いなく心の中で何かが元に戻るのを感じた。そして今は、地球が救われたことに対する喜びしかない」
「僕もだ」
そこでようやく、二人は抱き合ってあらん限りの声を上げた。
ところ変わってここはアメリカ・フロリダ州。
「咲いている……だと……」
恐る恐る、花に手を伸ばす。それは、長年の研究の末についに開発された、一晩でみかんの木を腐らせ、乾燥させ、粉末状に分解してしまうという恐るべき薬剤を散布されたみかんの木だった。
「何が起きた。まさか……あいつら」
震える手が花に近づく。
「「叡智」を完成させたのか」
かつての高僧は、いつくしむような手つきで、みかんの花に触れた。憎悪の表情は、穏やかな笑みに変わっていた。
そして世界は争いをやめた。空は澄み渡り、大地には花が咲いた。動物たちは寄り添い合い、人は朗らかに微笑みあった。そして、今までよりもちょっと多くのみかんの木が世界中に生まれた。
ただし、日本とモルディブだけが戻ってこなかった。
http://kasocube.blog.shinobi.jp/Entry/210/イシキトナメシリーズ: 1回戦3試合目